婚姻契約書-Marriage contracts
大切な同性パートナーと「婚姻契約書」を結んでみませんか?
EMA日本は、戸籍上の性別が同性のカップル(同性カップル)をサポートするための「婚姻契約書」を提供しています。これは同性婚が法律で認められるまで、同性カップルが直面する法的問題などに対して一時的に対策支援するものです。
現在、日本では同性婚は認められていません。そのため、同性パートナーが危篤状態で病院に担ぎ込まれたら面会ができない、死別のときに相続ができない、別れる際、貯金や家などの資産の分割時に揉めるなど、様々な場面で難しさを経験します。
EMA日本は、その難しさを一部解消・緩和するための契約書の雛形を用意しました。
1.対応すること・できないこと
2.契約の結び方
① 自宅でできる契約(私文書)
② 公証人から証明された契約(公正証書)
③ 公正証書遺言
3.注意点
4.お問い合わせ先
1. 対応すること・できないこと
EMAの契約書の雛形は、民法の婚姻制度を基に作成しています。そのため、下記の内容を盛り込んでいます
- 生活費を双方が公平に分担すること
- パートナーの名義の住居について同居の権限を持つこと
- 日常的な家事に関連する契約は、双方が代理権を持たせること(電気・ガス・水道等の契約に代理人になる)
- 病気になった/入院したパートナーとの面会や医療同意の代行をできるようにすること
- パートナーに子どもがいるとき、その子どもの教育監護に関われるようにすること
- 片方の独断によって容易に終結(離婚)できないようにすること
- 離婚する際、それまでに二人が蓄えた財産を公平に分けることができるようにすること
- パートナーが亡くなったとき、葬儀・納骨・埋葬などを主宰し、(法律上の)配偶者と同様の地位を確保できるようにすること
- パートナーが亡くなったとき、その財産を取得できるようにすること(ただし、この契約書に加えて遺言書を別途作成しておく必要がある)
- 配偶者控除などの税制優遇
- 健康保険における被扶養者の地位(ただし、事実上婚姻関係と同様の配偶者も含むため、認められる余地はある)
- 当事者の一方が亡くなった 際の相続権(ただし、「公正証書遺言」を作ることで財産の承継は可能。詳しくは2.③)
- 住宅ローンにおけるペアローンの利用(一部の金融機関を除く)
- クレジットカードにおける家族会員などの民間サービスの利用(一部の民間サービスを除く)
これから紹介する婚姻契約書による「婚姻契約」は、あくまで契約をする二人の間の決めごとであり、 第三者に効力を及ぼすことは原則としてできません。
2.契約の結び方
二人の間の婚姻契約を3通りご紹介します。
① 自宅でできる契約(私文書) 最も容易な方法
② 婚姻契約公正証書 公証人に婚姻契約書を証明してもらう方法
③ 「婚姻契約公正証書」に加えて、遺言書を2つ目の公正証書として用意する方法
①自宅でできる契約(私文書)
民法に基づいて作成された婚姻契約書(私文書)を使って契約を交わします。当事者二人と、友人など二名の証人がいれば、自宅などでできる一番簡単な方法です。
作り方
1.婚姻契約書(私文書) (Word) をダウンロードする。
2.契約書の内容と、このページの「3.注意点」をパートナー同士で確認する。
3.実印を準備する。
・実印は地方自治体に登録した印鑑を指します。実印がない場合、2人の印鑑を市役所で登録して「実印」を作ります
4.証人2名を揃える。
・「証人」は、友人や知人等、知り合いの方で大丈夫です。証人は、この「婚姻契約」を結んだという事実を証明します。なお、証人になったとしても、法律上の義務を負うことは一切ありません。
・証人は婚姻契約書上に氏名と住所を記入し、署名と押印をします。印鑑は認め印(実印ではなく、登録していない印鑑)で構いません。なお、契約を結んだあと、証人の氏名や住所に変更が生じても、契約書を変更する必要はありません。
5.「婚姻契約書」上に、婚姻契約を交わす2名と証人2名の名前と住所を該当箇所を入力する。
6.2部(二人分)印刷する。
7.それぞれをホッチキス留めして、製本テープを付ける(賃貸契約書などで使われる製本形式です)。
下記の流れは、2部それぞれで行なってください。
8.最終ページに2人で署名し、それぞれの実印を押す。
9.2名の証人が同じ最終ページに署名と押印をする。
10.最後に契約を結ぶ2人の実印それぞれを使って契印する。
11.ページ見開きの綴じ目に両ページにまたがるように押印、または背表紙の製本テープにまたがるように押印する。
12.完成した契約書は、お互いに一部ずつ保管する。
・印鑑証明書も添付しておくと良い。
以上、私文書という形で婚姻契約を結ぶこともできますが、公的な書面の形で残したい、パートナーに遺産を残したい場合は、次の②と③の公正証書の手続きを行います。
② 公証人から証明された契約(公正証書)
公的に認証権限を持った第三者(公証人)に二人の契約書を証明してもらい、「婚姻契約公正証書」を作る方法です。公証人は、法務大臣に任命され、守秘義務があります。公証人に証明を受けた契約書は「公正証書」と呼ばれます。渋谷区は、同性パートナーシップ証明書を発行する際に公正証書の提出を求めています(2018年2月現在)。
この公正証書は、医療機関や不動産、親族を含めた第三者との話合いの際に、①の私文書よりもより強い説得力を持ちます。一方、費用が15,000円前後と手間がかかります。
作り方
1.最寄りの公証役場と公証人を見つける(ご参照: 「公正役場」日本公正人連合会のHP)
2.「婚姻契約公正証書用様式」(Word)と「婚姻契約書の解説(各条項の説明)」(PDF)をダウンロードし、内容を確認する。
3.公証人に相談の連絡を行い、公証人の指示に従って上記2つのファイルを送り(公証人が公証役場の形式に合わせて修正し、公証役場が契約書を用意します)、手続きを進める。
【参考】
・法務省「公正制度について」
・日本公正人連合会「公正役場」
婚姻契約公正証書は、民法(婚姻法)の内容の多くをカバーしています。しかし、相続法などの内容は範囲外となります。②の婚姻契約公正証書には、私文書版で規定している「負担付死因贈与」の条文はありません(別途公証役場で手数料が発生するため)。パートナーに遺産を残すためには、婚姻契約公正証書の他に、次の遺言書の作成が必須です。
③公正証書遺言
婚姻契約書をサポートするものとして、EMA日本では公正証書遺言のひな型を提供します。
遺言公正証書を公証役場で作成する際の手数料は、遺言により相手に贈与する財産の価額や、贈与する相手の人数等により異なります。たとえば、現在の預貯金が100万円ある方が、その財産をパートナーだけに遺贈する遺言書を作成した場合、公証役場にお支払いする手数料は、およそ3万5000円前後です。この場合は、公正証書遺言(簡易版)(Word)をご参照ください(不動産を遺贈する場合は後述をご参照)。
・不動産を遺贈する場合
不動産は上記の簡易版のみでも遺贈できますが、不動産の所有権移転登記をする際に不動産の表示があると手続きの煩雑さを軽減できます。そのため、不動産を遺贈する場合、下記の「公正証書遺言(不動産遺贈)」(Word)の利用をご検討ください。簡易版の内容に不動産の表示を追加した雛形です。
当事者の一方が4000万円程度のマンションを持っている場合、そのマンションをパートナーに遺贈する公正証書遺言を作成するのであれば、住宅ローンの有無やローン残高にかかわらず、その公証手数料は、およそ5万5000円程度です。
3.注意点
- 事前に2つの書類、「婚姻契約書解説(総論)」(PDF) と「婚姻契約書の解説(各条項の説明)」(PDF)の内容をご了承の上、ご利用ください。
- この契約書は、民法の婚姻制度やそれに関する過去の裁判例などを基にして作成してあります。希望に合わせて内容を変える際は「婚姻契約書」ではなく、「パートナーシップ契約書」等の題名にするよう、ご協力いただけると幸いです。
- この契約書に関して、裁判所が有効・無効を判断した事案はまだありません。そのため、EMA 日本は、本契約書の有効性、適法性、実際に紛争 となった場合の解釈の方向性等について、いかなる確約・保証はいたしませ ん。
- ご利用になる際には、本件契約書の利用状況を把握するため、本ホームページのお問い合せページから、お住まいの地域・お二人の年代(20代、30代、40代、50代など)などをご一報頂ければ幸いです。
4.お問い合わせ先
下記を含め、この婚姻契約書に関するお問い合わせは、こちらからご連絡ください。
- 契約書の内容や手続きの流れなどの質問・相談
- 行政書士、弁護士、司法書士、公証人など、専門家の方々からのご相談やお問い合わせ
- 勉強会・説明会などへの講師派遣