荒井勝喜首相秘書官の差別発言について
荒井勝喜首相秘書官は、同性カップルについて「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」と発言し、同性婚に関し、「認めたら、日本を捨てる人も出てくる」などと語ったと報道されています。岸田首相はこの発言を「言語道断」だとし、同秘書官を更迭すると明らかにしました。
首相秘書官の立場にある人物が、同性カップルへの差別意識を表明し、人権を軽視する発言をしたことで、同性愛者やその家族の多くが心を傷つけられました。
平成9年に確定した「府中青年の家」裁判の判決は、「行政当局としては、その職務を行うについて、少数者である同性愛者をも視野に入れた、肌理の細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されないことである」と述べています。荒井秘書官の更迭は当然です。
荒井氏が、同性カップルへの差別意識をどのように持つに至ったのかは明らかではありませんが、米国への留学や勤務経験がある政府高官が、日本の同盟国である米国をはじめとする多くの国で同性婚が認められていることを知らなかったのでしょうか。今年は日本がG7の議長国と国連安全保障理事会の理事国を務めています。昨年のG7サミットのコミュニケに言及されている通り、性的指向及び性自認を含む多様性を尊重することは、先進主要国において共有されており、性的少数者の尊厳を軽視することは国際社会の平和と安全保障にとっても脅威です。
同性婚を認める国々において、国を捨てる人が出たというのもむしろ逆で、同性婚できないから日本を離れざるを得ない人たちの苦難にこそ、首相秘書官という立場の人であれば思いを巡らせるべきではないでしょうか。LGBTQの人たちは偏見に苦しみ、尊厳を侵されながらも、日本社会の一員として生きています。日本に先んじて多様性を尊重し婚姻の自由と平等を認める国々が、経済社会の活力を高めている事実にも学んでいただきたいです。
岸田首相には性的少数者の声に「聞く力」を発揮していただき、社会の無知による偏見や誤解を解消して下さることを願います。そして日本の国会が一日も早く同性婚を認める法改正を行うことを求めます。